クラウドAI診断とは
クラウド環境全体を対象にするAI診断
クラウドAI診断は、AWS・Google Cloud・Azureなどのクラウド環境を丸ごと対象にするセキュリティ診断です。クラウド上の資産(サーバ・ストレージ・IAM・ネットワーク構成)と、そこで動くワークロードをあわせて扱います。
当社が構築した診断パイプライン上で、AIエージェントが偵察・解析・攻撃実行・評価のサイクルを自ら回し、エンジニアが目標設定と結果の確認・評価で診断を指揮します。クラウドの設定情報だけでなく、ディスクに残る情報や稼働中のワークロードのソースコードまで組み合わせて、攻撃者が実際にたどり着ける経路を特定します。
アプリケーション診断との違い
Webアプリケーション診断やペネトレーションテストが「外から見えるシステム」を検証するのに対し、クラウドAI診断は「環境そのもの」を検証します。アプリケーションに脆弱性がなくても、IAMの過剰な権限、公開されたストレージ、ディスクに残った認証情報を通じて侵入されるケースがあります。クラウドAI診断は、こうした環境側の弱点をアプリケーション診断と同じ土俵で検証します。
CSPM(設定診断)の限界
クラウドの設定診断(CSPMと呼ばれる種類のサービス)は、IAMポリシー・公開バケット・ネットワーク構成などの設定ミスを検出します。これは脆弱性管理の出発点として有効ですが、設定項目ごとの個別評価であるため、弱点同士がつながって生じるリスクを評価できません。
たとえば「あるロールの権限が広い」と「あるサーバのディスクにAPIキーが残っている」という2つの指摘は、別々に見れば重大度は低くても、攻撃者がそのAPIキーでロールの権限を取得すれば、データベース全体へのアクセスにつながる可能性があります。
アタックパスとして評価する
攻撃者は個々の弱点を一つずつ評価するのではなく、つなげられるかどうかで狙いを決めます。この「攻撃経路(アタックパス)」の視点を診断に持ち込むには、設定情報・ディスクの内容・ワークロードのコードという異なる層の情報を横断して解析する必要があります。クラウドAI診断では、AIエージェントがこの横断的な解析を担い、エンジニアが結果の確認・評価を行います。
リポジトリのスキャンでは見つからない認証情報
GitリポジトリやCI/CDパイプラインを対象にしたシークレットスキャンは普及していますが、実際に稼働しているサーバのディスクには、スキャン対象外の認証情報が残ることがあります。開発時に使った一時的な設定ファイル、削除したつもりの古い鍵、シェルの操作履歴、スワップ領域に書き出された情報などです。
これらは「never-touch-disk(認証情報をディスクに書かない)」の運用が徹底されていない環境で残り、攻撃者がサーバに一度足がかりを得れば、権限昇格や横展開の材料に使われます。
設定ファイルとその残骸
.envファイルやアプリケーションの設定ファイルに書かれたデータベースの接続情報やAPIキー。削除済みでもディスクの空き領域に実体が残っていることがあります。
シェルの操作履歴
.bash_historyなどに残るコマンド履歴。トークンを含むcurlコマンドや、一時的に発行した認証情報を含む操作が記録されていることがあります。
スワップ・テンポラリ領域
メモリからディスクに退避されたデータや、一時ファイルとして書き出された情報。プロセスが扱った認証情報が意図せず残る場合があります。
ディスクから分かるサーバの弱点
ディスクには、シークレットのほかに、サーバにインストールされたソフトウェアや設定ファイルもそのまま残っています。これらを解析すると、侵入される前に塞いでおくべき弱点を洗い出せます。
既知の脆弱性の検出は、CNAPPなどのツールでも提供されています。クラウドAI診断では、見つかった弱点が設定やコードの弱点とつながり、攻撃経路のどこで悪用されうるかまで評価します。
既知の脆弱性・サポート切れのソフトウェア
インストール済みのパッケージやミドルウェアの版を調べ、公表済みの脆弱性を含むものや、サポートが終了したものがないかを確認します。
サーバ設定とファイル権限
SSHやWebサーバの設定、ファイルやディレクトリの権限を確認し、不要な機能の有効化や、誰でも書き込める重要ファイルがないかを調べます。
コンテナイメージ
ディスク上に保存されたコンテナイメージの各層を解析し、シークレットや脆弱なパッケージが含まれていないかを確認します。
本番に影響を与えない調査方法
ディスクの調査は、クラウドのスナップショット機能(AWSのEBSスナップショット等)から取得したコピーを対象に行います。稼働中のサーバに直接アクセスしたり、サービスを停止したりすることはありません。取得したスナップショットを解析専用の環境に複製し、調査します。
発見されたシークレットは、「どこから取得され、どの権限で何ができるか」をセットで報告します。影響範囲の判断と対応の優先順位づけに使えます。
稼働環境に残るコードを解析する
リポジトリ上のソースコードを対象にする静的解析(SAST)は一般的ですが、実際に稼働しているワークロードのコードは、リポジトリの内容と一致するとは限りません。デプロイ時に組み込まれる設定値、環境ごとに異なるビルド、リポジトリからは除去されたが稼働環境に残る開発用コードなどがあります。
クラウドAI診断では、稼働中のサーバから取得したコード(ディスク上のアプリケーションファイル等)を対象に解析します。実データを持つAIエージェントが認可ロジックを検証するため、リポジトリだけを見ていては気づけない、実装と運用の間のズレを検出できます。
認可ロジックの欠陥
正しく動くように見えるコードに潜む、オブジェクト単位の認可の穴。実データで「他のテナントのデータが読めるか」を検証します。
ハードコードされた認証情報
ビルド時に埋め込まれたAPIキーや接続情報。リポジトリには存在せず、稼働環境のディスクにのみ残るものが対象です。
開発用コードの残存
デバッグエンドポイント、開発用のバックドア的な機能、コメントアウトされた旧実装。公開を前提とした検証で見つかるものを、実コードから洗い出します。
クラウドの外にある入口
クラウド環境への入口は、クラウドの設定だけではありません。ID管理(IdP)のログイン設定や管理者権限、開発基盤から発行されたアクセストークン、Webサイトに組み込まれたマーケティングツールも、攻撃者がクラウドや顧客データに到達する経路になります。
クラウドAI診断 ディープでは、クラウドと連携するSaaSの設定を確認し、ディスクやコードで見つかった弱点とあわせて、SaaSをまたぐ攻撃経路として評価します。どのSaaSを対象にするかは、環境の構成と診断の目的に合わせて個別に決めます。
ID管理(IdP)
Google WorkspaceやMicrosoft Entra IDなど。多要素認証の設定、管理者権限の割り当て、クラウドへのシングルサインオンの設定を確認します。
開発基盤・業務ツール
GitHubやSlackなど。アクセストークンの発行状況、外部アプリとの連携、リポジトリやチャンネルの公開範囲を確認します。
マーケティングツール
Google AnalyticsやGoogleタグマネージャー、MAツールなど。管理者・編集権限の割り当て、タグの配信設定を通じてWebサイトに不正なスクリプトを埋め込まれる経路がないか、顧客データの共有・連携の設定を確認します。
予防的フォレンジックという考え方
クラウドAI診断では、ディスクの調査にフォレンジック(デジタル証拠の分析)の技術を使います。これには、すでに侵入を受けていないかを確認する「侵害兆候評価」の側面があり、気づかれていない侵害の初期兆候を見つけられます。
ランサムウェアや標的型攻撃は、実害が出る前に偵察・潜伏の期間があることが知られています。事前にディスクを調査する習慣を持つことで、侵害が進行する前の段階で発見できる可能性が上がります。
確認する侵入の痕跡
スナップショットを取得した時点のディスクを対象に、次の4つの観点で痕跡を調べます。メモリ上だけで動作するプログラムなど、ディスクに痕跡を残さない攻撃は確認の対象外です。
永続化の仕組み
定期実行の設定や、自動起動するサービス・スクリプトに、攻撃者が再侵入のために追加したものがないかを確認します。
不審なアカウント・SSH鍵
見覚えのないユーザー、管理者権限の付与、SSH公開鍵の追加など、攻撃者が足場として残したアクセス手段がないかを調べます。
不正なプログラム
Webサーバの公開領域に置かれた不正なスクリプト(Webシェル)、仮想通貨の採掘プログラム、既知のマルウェアがないかを確認します。
ログの不自然な点
認証ログの削除や欠落、想定外の時間帯や接続元からのログイン記録など、侵入や痕跡の隠蔽を示す形跡を調べます。
実害が発生した場合のフォレンジック
インシデントが実際に発生した場合の対応(証拠保全・原因調査・影響範囲の確定)は、別の専門的な対応になります。事前診断で取得方法や分析の観点を設計しておくと、実害時の調査で使える証拠を確実に残せます。インシデント対応が必要になった場合は、当社までご相談ください。
3つのコースから範囲を選ぶ
クラウドAI診断は、確認の深さに応じて3つのコースから選べます。設定のチェックだけの軽い範囲から、ディスクの内容や連携するSaaSまで確認するオーダーメードの範囲まで、目的と予算に合わせて段階的に広げられます。
| コース | 対象 | 確認内容 |
|---|---|---|
| クラウド設定診断 | クラウド設定・IAM | 設定値の誤り・過剰権限の洗い出し |
| クラウドAI診断 | 設定+稼働ワークロード | 上記に加え、ソースコード解析とアタックパスの特定 |
| クラウドAI診断 ディープ | 設定+コード+ディスク+連携SaaS | 上記に加え、シークレット・侵入の痕跡・サーバとSaaSの弱点を、範囲を個別に設計して確認 |
既存ツールとの棲み分け
CNAPP(クラウドのセキュリティ管理プラットフォーム)をすでに導入している場合でも、クラウドAI診断は補完的に機能します。ツールは設定の継続監視を担い、診断は特定時点の深い検証(ディスク・コード・連携SaaS・アタックパス)を担う、という分担ができます。
環境全体を診断して、攻撃者の視点で評価する
クラウドのリスクは、個々の設定ミスではなく、弱点がつながったアタックパスとして顕在化します。クラウドAI診断は、設定・ディスク・ワークロードコードという3層を横断して、攻撃者が実際にたどり着ける経路を検証します。AIペネトレーションテストの技術をクラウド環境に適用した、コクチョウならではの診断です。